睡眠時無呼吸症候群の治療 (一般編)

群馬大学医学部附属病院脳卒中・心臓病等総合支援センター

コラム 心臓病あれこれ

石井
|センター長|

睡眠時無呼吸症候群について造詣の深い群馬大学循環器内科高間准教授からのコラムです。
昼間に眠くなる方の中には、しっかり検査をすると睡眠時呼吸症候群のこともあり、結構皆さん知らずに過ごされていることも多いそうです。また「いびき」をかく方は、要注意とのこと。
睡眠時も呼吸症候群とは何か、そして注意しないといけないことは何かを5回シリーズでお届けします。

担当:高間

SASは今まで述べたように多くの循環器疾患と多種多様に関連をもっています。SASの治療が効果的に行われれば、循環器疾患への進展が予防されます。また、循環器疾患に罹患している場合には、その疾患の治療にもつながることをしっかりと理解しなければなりません。

4-1: 生活習慣の改善

日本循環器学会のガイドラインには生活習慣を見直すことについて重要性が記載されています1)。主に閉塞性睡眠時無呼吸症候群(Obstructive sleep apnea syndrome: OSAS)において、体重や喫煙、飲酒、睡眠薬、運動について生活習慣の是正の重要性が記載されています(表1)。日本では、就寝前に眠ることを目的として飲酒する人が多いかもしれませんが、これはむしろ逆効果であることを認識していただき、就寝前の飲酒は禁止とすることが推奨されています。

表1(ガイドライン内 表17)OSA患者における生活習慣の是正に関する推奨とエビデンスレベル

日本循環器学会
2023年改訂版「循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン」.
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2023/03/JCS2023_kasai.pdf
2024年12月閲覧

4-2: OSASの治療

OSASの治療には、陽圧換気療法であるContinuous positive air pressure (CPAP)の他に外科的治療や口腔内デバイス、まだ一般的ではないものの舌下神経電気刺激療法などがあります。今回はCPAP治療に限って説明いたします。CPAPは鼻もしくは口鼻マスクより一定の陽圧を送ることで、OSASにおける低呼吸(結果として無呼吸も)を予防するものです。本邦ではApnea hypopnea index (AHI)がポリソムノグラフィー検査にて 20/hour以上、簡易検査の場合には40/hour以上の場合に、保険適応として治療を受けることができます。表2にCPAP治療の推奨とエビデンスを示します。このような効果を得るためにも、しっかりとした治療を行うことが重要です。マスクを就寝時使用することは、最初のうちはなかなか慣れないものです。また陽圧も人によっては当初苦しく感じる方もいらっしゃるのが事実です。そういう状況をしっかり把握、評価し治療継続に結びつけるためにも、睡眠時無呼吸を専門としている(それに準ずる)医師に定期的に通院し、治療効果の評価と問題点を洗い出してもらうことが非常に重要です。

表2(ガイドライン内 表18)OSA患者におけるCPAP治療による症状やQOLの改善に関する推奨とエビデンスレベル

【参考文献】

1. 日本循環器学会. 2023年改訂版循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン, 2023.

ガイドライン転記につき、日本循環器学会の許諾済み。