睡眠時無呼吸症候群と心疾患の関連について

コラム　心臓病あれこれ

睡眠時無呼吸症候群について造詣の深い群馬大学循環器内科高間准教授からのコラムです。
昼間に眠くなる方の中には、しっかり検査をすると睡眠時呼吸症候群のこともあり、結構皆さん知らずに過ごされていることも多いそうです。また「いびき」をかく方は、要注意とのこと。
睡眠時も呼吸症候群とは何か、そして注意しないといけないことは何かを5回シリーズでお届けします。

3) 循環器領域における睡眠時無呼吸症候群の重要性について

睡眠時無呼吸症候群(Sleep apnea syndrome: SAS)は、前述したように循環器の病気と密接な関連をもっています(コラム第一回参照)。私たちが日常診療でよく診察している高血圧や不整脈(代表的には心房細動)を持っている患者さんでは高頻度にSASが認められ、治療せず放置した場合には、心臓病などのイベントを生じる危険因子であると報告されています^1,2)。

過去に行った私たちの検討でも、同様の結果が得られており、心臓病を治療する際には、SASに関しても十分配慮することが重要であることがわかります(図1：SASを認める方は非SASの方と比較して、生存率が低いことを示しています)。

次に、心不全側から見たSASの重要性について説明したいと思います。心不全はステージ別に適切な治療を行うことが重要となっています。図2に示すように心不全には、ステージ別の身体機能、治療目標があります。いわゆる心不全はステージCですが、その前段階のステージAからB、そして入院も必要となるようなステージCやDといったところまでを適切に管理することがとても大事です。

この際のSASの立ち位置についても図の上の方に追加してみました。ステージAは、皆さんもご存じの危険因子である糖尿病や高血圧、脂質代謝異常症（コレステロールが高いなど）の管理が重要なステージです。そのステージ Aにおいて、SASは”死の五重奏”といわれるように重要な位置を占めています。ステージ Bは虚血性心疾患（心筋梗塞や狭心症）や、心房細動などの心臓に関する病気が発症した状態を示します。この状況になると、すでにSASを多くの症例で有していることが多くの研究でもわかっています。^3,4)また図1にも示したとおり、放置した場合には命の危険にさえ関わってくることがあり、心房細動を引き起こす要因の一つとも考えられており、循環器疾患発症のトリガーとして考えておくことが重要です。　　

さらに不幸にも心不全になってしまった場合(Stage C以降)にもSASは大きな存在感を示します。当施設のデータでは心不全発症例の91% {Apnea hypopnea index (AHI)≧5/hourとした場合}にてSASを呈していました。またそれら症例における平均AHIは35/hourを越えるような極めて重症な状況であることもわかっています。心不全に罹患した状態では、中枢性睡眠時無呼吸症候群(Central sleep apnea syndrome: CSA)が検出される率が高くなるばかりでなく、チェーンストークス呼吸なども散見されるようになります。このような様々なタイプを持つSASが、心不全を表現しているといってもいいのかもしれません。

以上、心臓や血管に関する病気とSASの密接な関係について簡単にまとめてみました。重要なことはこれらの関連についてしっかりと理解し、必要な場合には積極的な診断、治療介入を行うことです。それが最終的には心臓病や血管病といわれる循環器疾患の治療にもつながることを理解しましょう。

【参考文献】
1) HeJ, Kryger MH, Zorick FJ, Conway W, T Roth T. Mortality and apnea index in obstructive sleep apnea. Experience in 385 male patients. Chest 1988; 94: 9-14.
2) ShaharE, Whitney CW, Redline S, et al. Sleep-disordered breathing and cardiovascular disease: cross-sectional results of the Sleep Heart Health Study. Am J Respir Crit Care Med 2001; 163: 19-25.
3) Schäfer H, Koehler U, Ewig S, Hasper E, Tasci S, Lüderitz B. Obstructive sleep apnea as a risk marker in coronary artery disease. Cardiology 1999; 92: 79-84.
4) Gami AS, Pressman G, Caples SM, et al. Association of atrial fibrillation and obstructive sleep apnea. Circulation 2004; 110: 364-367.