糖尿病・高血糖と血管病との関わり

群馬大学医学部附属病院脳卒中・心臓病等総合支援センター

特別コラム

石井
|センター長|

現在、日本では糖尿病が強く疑われる人は約1,000万人、また糖尿病の可能性を否定できない人も約1,000万人、合計すると約2,000万人いると推計されています。この数は近年増加傾向にあります。一方、厚生労働省が行っている「患者調査」[令和2年(2020)版]によると、糖尿病で現在治療を受けている患者総数は579万1,000人(男性338万5,000人、女性240万6,000人)ですから、しっかりと治療されている方は実際の糖尿病患者さん実際の数よりも圧倒的に少ないようです。

糖尿病、またその前段階といわれる耐糖能障害といわれる状態は、脳卒中・心臓病はじめ血管病の発症に大きな影響を与えます。今回、2024年12月から群馬大学内分泌代謝内科学教授に就任された山田英二郎先生より、糖尿病・高血糖と「糖尿病・高血糖と血管病との関わり」というタイトルで特別寄稿・コラムを書いていただきました。どうぞ、検診、健診はじめ、普段、医院や病院で行っている採血の中で血糖にも注意をしてみてください。

山田先生の群馬大学内分泌代謝内科学教授ご就任を心よりお慶び申し上げるとともに、今後も当センターに対しまして温かいご協力をお願い申し上げます。

糖尿病は、血糖値を下げるホルモン「インスリン」が十分に分泌されなかったり、その働きが弱くなることで、血糖値が慢性的に高くなる病気です。その原因は、遺伝的な要因に加え、食べ過ぎ、加齢などの生活習慣が関与しています。高血糖状態が続くとインスリンの作用がさらに低下し、最終的に糖尿病を発症します。(下図) 運動すると、糖を使ってカロリー消費され、また臓器や筋肉でのインスリンが効きが良くなるため、血糖が下がる方向になりますが、運動をしないとそのような効果が見られないため血糖が上昇しやすくなります。運動不足は糖尿病の発症に大きくかかわっています。

群馬大学 内分泌代謝内科学 教授
山田英二郎

群馬大学
内分泌代謝内科学
教授
山田英二郎

血糖値が高い状態が続くと、血管が傷つきやすくなり、脂肪やコレステロールがたまりやすくなります。そうすると、血管が痛んできます。患者さんには、水道管に錆がたまる様子を例えにして説明しています。そのような状態になると、血管が細くなって詰まりやすくなり、また脆弱になるため血管が破裂することもあります。そのことによって、血管の血流が悪くなる(血管が細くなったり詰まったりする)ことによって脳梗塞や狭心症・心筋梗塞、また血管が切れてしまうことによって生じる脳出血が生じます。血管に悪い影響を及ぼすのは糖尿病ばかりでなく、高血圧や脂質異常症、喫煙といったリスク要因があります。これらが重なると、動脈硬化が進みやすくなります。結果、脳卒中や心臓病のリスクが高まります。

さらに報告では、糖尿病になる前の「高血糖状態」でも動脈硬化が起こる可能性があるとされています。そのため糖尿病でなくても、普段から血糖値を適切にコントロールするだけでなく、塩分を控えた食事、適度な運動、体重管理、禁煙などの生活習慣の改善が重要です。

最近は糖尿病と心不全の関連も注目されています。糖尿病は動脈硬化のみならず心筋への負担を増やし、心不全リスクを高めます。早期発見で適切な治療を行えば、健康寿命が延伸します!糖尿病の方で息切れなどの症状がある場合は早めに医師に相談しましょう。

糖尿病を適切に管理することは、脳卒中や心筋梗塞を防ぎ、元気で長生きするための大切な鍵です。健康を守るため、できることから一歩ずつ始めていきましょう!