SGLT2阻害薬について
群馬大学医学部附属病院脳卒中・心臓病等総合支援センター
薬剤師からのひとこと

センター長
新たに、「薬剤師からのひとこと」というシリーズを開始します。
生活習慣の改善とともに、お薬を服用することは患者さんご自身でやっていただかないといけないことです。しっかりお薬を服用する(のむ)コツや、飲みにくい時にはどうするか、またあっては困るのですが災害などが生じた際にも役に立つお薬の情報など、当センターの薬剤師がコラムを書いてくれます。

SGLT2阻害薬について
こんにちは。
薬剤師の柴﨑です。
今回はSGLT2阻害薬についてお話いたします。


水分量の調節やその他様々な作用によって心不全の悪化を防ぐお薬です。もともと糖尿病治療薬として登場しましたが、心臓へ有益な作用をもたらすことが分かり、糖尿病と診断されていない方でも心不全治療薬として使用出来るようになりました。加えて、腎臓にも良い効果があることもわかってきました。心不全患者さんのかなりの割合が慢性腎臓病を合併しているといわれており、近年処方されることが大変多くなってきました。
SGLT2阻害薬は尿中に糖分を排泄する薬のため、糖尿病でなくても尿検査を行った際には尿糖陽性となります。このため、尿路感染症などを起こす場合があります。排尿時の痛みを感じた場合などはかかりつけの先生に相談してください。感染症自体が心不全を悪化させる原因となる場合があるので、感染症を起こさないために排尿排便時は清潔を保つことやトイレを我慢しないことなどを心がけましょう。
また糖分を排泄する薬のため低血糖が起きる可能性があります。SGLT2阻害薬単独で低血糖になる可能性は極めて低いですが、他の糖尿病治療薬を使用している方は低血糖には注意が必要です。手足の震えや冷汗など低血糖症状が疑われる場合は、すぐに糖分を摂取してください。この時、ボグリボースやミグリトールといったアルファグルコシダーゼ阻害薬を内服している方は、ブドウ糖を摂取する必要があります。
豆知識です。1835年、リンゴの樹皮からフロリジンが発見され、SGLT2阻害薬の起源になっています。そういえば、「一日一個のリンゴは医者を遠ざける」という西洋のことわざがありましたね!