心アミロイドーシスが、実はたくさん隠れています!
群馬大学医学部附属病院脳卒中・心臓病等総合支援センター
心アミロイドーシスが、実はたくさん隠れています!

センター長
「アミロイドーシス」という病気を聞いたことがありますか?ちょっと難しそうな病名ですよね。少し前までは、良い治療法もあまりなく、長生きもできない病気だったのですが、医学の進歩により早期発見・治療で克服できるようになってきました。しかし、この病気はまず疑うことが重要と言われています。というのも、診断がなかなか難しいからです。
心臓の動きが良い心不全患者さんの中にアミロイドーシスが隠れていることもありますので、我々が訴えている「心不全の早期発見事業」でも診断されることがあります。
今回、小板橋紀通先生(群馬大学医学部附属病院/群馬県立心臓血管センター)に、「心アミロイドーシスが、実はたくさん隠れています!」というタイトルで早期発見、診断の流れを解説いただきました。
ご不明なことがあれば、是非メール相談でお問い合わせください。
心臓に異常な“たんぱく質”が蓄積して重症な心不全を発症する「心アミロイドーシス」の患者さんはこれまで非常に稀と考えられてきました。しかし、トランスサイレチン型(ATTR)心アミロイドーシスは慢性心不全、特に左室駆出率の保たれた心不全や大動脈弁狭窄、心房細動など”高齢の患者さんによくある心疾患”に隠れて存在し、その有病率は従来考えられていたよりも遥かに高いことが近年数多く報告されています。これは、近年の画像診断の進歩によって判明してきたことです。さらに早期発見することの重要な点としては、アミロイドーシスというやっかいな病気の進行が、コントロールすることのできる新たな薬剤が開発・上市されていることです。言い換えれば、病気を早いうちに診断し、治療することが、長生きや生活の質改善につながるということです。
様々な疾患でも薬物治療の進歩によって診療は大きく変革してきましたが、その中でも今や心アミロイドーシスは早期診断・早期治療するべき疾患の代表格といっても過言ではない状況となりました。このような背景を基としまして、群馬大学医学部附属病院脳卒中心臓病等総合支援センター(ぐんまのうしん)では、群馬大学循環器内科・その関連病院、そして県内と近隣施設の先生方と協力しながら、心アミロイドーシスの診断・治療に関わるあらゆる依頼に対処し、早期診断・早期治療の目的を達成していきたいと考えております。
【疾患概念】
ATTRアミロイドーシスは遺伝子変異、または野生型のトランスサイレチンがアミロイド前駆蛋白となり、四量体が解離・ミスフォールディング・重合しアミロイド線維が形成され、組織に沈着し機能障害をきたすことで発症します。
(2020年版心アミロイドーシス診療ガイドラインをご参照ください)
【病態】
トランスサイレチン由来のアミロイド線維のおもな沈着組織は、心臓、肺、腎臓、消化管、腹壁脂肪、関節・靱帯と全身に及びますが、症状が顕在化するのはおもに関節・靱帯、そして心臓であり,それぞれ手根管症候群・脊柱管狭窄症、心 肥大・不整脈・心不全という形で発症します。
(2020年版心アミロイドーシス診療ガイドラインをご参照ください)
【診断について(特にかかりつけの先生方に)】
従来、確定診断し治療薬を処方するためには主に心内膜心筋生検を行い病理学的診断が必須でしたが、2025年5月より、核医学検査のアミロイドーシスシンチで陽性と判断されれば、確定診断・治療薬の処方が可能となりました。
心筋症疑いの患者さんがいらっしゃいましたら、図1にお示ししますシンチ実施可能施設をご参照頂き、検査のご依頼をお願いできればと思います。

参考として、群馬大学医学部附属病院では下記の診断フロー(図2)をお示しします。適切に患者さんの診断を行い、速やかな治療につなげています。
