2025年、「心」新たに頑張ります!|センター長ご挨拶|

群馬大学医学部附属病院脳卒中・心臓病等総合支援センター

 センター長 石井秀樹

2025年になりました。ご承知おきのように2025年問題といわれておりますのが、「団塊の世代」と呼ばれる方々皆さんが、75歳以上となられ、国民の5人に1人が後期高齢者になられることです。群馬県の高齢化は全国平均よりも進行しており、脳卒中・心臓病などの循環器系疾患は非常に増加しております。

ぐんまのうしんのメンバーは、県民の皆様に「脳卒中・心臓病・血管病にならない、なっても次に同じことを起こらないようにする」お手伝いをさせていただいております。脳卒中・心臓病に対して関心を持っていただき、健康寿命の延伸に資する事業を行ってまいりますので、本年も何卒よろしくお願いいたします。

 本年は巳年(みどし・へびどし)です。「へび」は爬虫類ですが、人間とは心臓の構造が違い、心臓の部屋が3つ(2心房1心室)しかありません(我々は2心房2心室)。このことは小中学校の理科で習ったことを覚えている方がいらっしゃるかもしれません。でも、「へび」などの爬虫類は心筋梗塞になりにくいことをご存じの方は少ないかもしれません。

我々の心臓は、冠動脈を通じて心筋に酸素や栄養が運ばれます。冠動脈は心臓の外側から、内側にある心筋に向かって走行しています。その冠動脈が詰まると、心筋に血液が遅れなく案るため酸素欠乏になり心筋梗塞という病気を発症し、生命にかかわる事態となります。一方、「へび」などの爬虫類にも冠動脈はあるといわれておりますが、心筋を栄養するほとんどの血液は心室から直接心筋に染み入っています。ですから仮に冠動脈が細くなったり詰まって血液が途絶えても、心筋梗塞になる危険性が相当低いそうです。残念ながら?我々の心臓では、心室と筋肉の間には心内膜があって、心室と心筋には交通がなく冠動脈に依存しております。

実は、へびやワニのこのような心臓の特徴をまねして、20年ほど前には左心室からレーザーで穴をあけて左室から心筋に血液が染み入るようにするという研究が行われましたが、すぐに穴がふさがってしまうので、うまくはいきませんでした。でも、他の動物からこのようなアイディアを得て人間に応用できることがこれからも多くあるかもしれません。心筋梗塞の治療をしている私からは興味深い事実です。

2025年は、昭和で言うと100年です。脳卒中・心臓病に対する治療と予防に対して、先人の方々が取り組まれてきたことを振り返り、新たな挑戦を行っていきたいと思います。引き続きご指導をよろしくお願いいたします。