心臓と対話してみませんか?(心不全と運動の関係)

群馬大学医学部附属病院脳卒中・心臓病等総合支援センター

コラム 心臓病あれこれ

石井
|センター長|

今回は、日本心臓リハビリテーション学会 心臓リハビリテーション指導士の長谷川さんに「心臓と対話してみませんか?」というタイトルで、心不全と運動の関係について書いていただきました。
皆さんもご自身の脈をとってみてください。心臓の動いた数が脈として伝わってきます。多くの方は1分間60-80回です。だから1日で心臓は10万回くらい収縮して血液を送り出しているんです。生まれてからずっと休みなく・・・それを考えるとすごいですよね。
ゆえに、「心臓との対話」は大事です。そんな思いで、コラムをご覧ください。

担当:長谷川

はじめまして、理学療法士の長谷川です。心臓リハビリテーション指導士の立場も踏まえて、本コラムを書いてみました。

気温差が大きい季節の変わり目はからだにとって負担がかかる時期です。こんな状況でも心臓は常に働き続けるために不具合を起こしやすいので注意が必要です。だからと言ってじっとするのではなく、心臓と対話しながら運動はいかがでしょうか。

心臓は休みなく酸素や栄養分を含む血液をからだ全体に送り出す大切な働きをしている臓器です。ところが、心臓の病気や加齢に伴う変化によって十分な機能を保てない状態になってしまうことがあり、これが「心不全」の状態です。心臓の機能が十分でないと心配になるかもしれませんが、こんなときはどうしたらよいでしょうか。また、動いでも大丈夫でしょうか。

まずは心不全の原因は様々ですのでかかりつけ医師や循環器内科の専門医師に診察を受けることが重要です。心不全の上流に何があるのか(何が原因で心不全なのか)によって、治療や我々からの指導も変わるからです。そして、診察によって必要な治療した上で、どのような運動をどのくらいの強度でやっていいかということの確認が重要です。

心臓の機能が充分でないと運動はよくないと思われる方も多いかもしれませんが、運動は心臓にとって重要とされています。運動することによって心臓への血流を高め筋肉の収縮によって血液の流れを助けるとされています。また適度な運動は心臓の働きを調整する自律神経のバランスを整え、結果的には心臓の機能を助けることにつながると言われています。また、最近の話題として運動によって心臓に良いホルモン用の物質(マイオカイン)が出てくるということも言われています。

一人ひとりにあった心臓に負担のない運動が大切です。では、心臓に負担のない運動とはどんな強さの運動でしょうか?それを調べるために、運動時の呼気ガス分析(運動負荷試験)のような検査を行うこともありますが、まずは自覚症状を目安に行うこともできます。運動時に「少し息が上がる」「息が上がっても運動が継続できる(お話ができる)」程度での運動が適切と言われています。「歯を食いしばって続ける」「苦しいを我慢する」程度になると強い運動となり場合によっては心臓に負担をかけてしまします。また、運動時間(量)に関しても同じように負担を感じるようになってきたら休みをとりながら運動を続けることも重要です。

このように自身の心臓に「今の心臓は?」と対話しながら運動を行うことをお勧めいたします。体調の良い時は少し頑張ってみたり、すぐれない時は控えめにしたり、体調に合わせて調節しながら継続することが心臓にとって良い運動となります。運動の強さなどを確認したい際には安全に運動を進めるためにも心不全に関わる医療スタッフにご相談ください。運動のみならず「心臓との対話方法について」もお手伝いさせていただきます。

群馬大学医学部附属病院 理学療法士 長谷川 信
(日本心臓リハビリテーション学会 心臓リハビリテーション指導士)