世界脳卒中デーに寄せて ―ふだんの生活から脳卒中を防ぐ―
群馬大学医学部附属病院脳卒中・心臓病等総合支援センター
コラム 脳卒中あれこれ

センター長
毎年10月29日は、「世界脳卒中デー(World Stroke Day)」です。毎年、 脳卒中の啓発活動としまして、世界脳卒中デーに合わせてライトアップを実施しております。イメージカラーは「インディゴブルー」です。今年度の群馬県における世界脳卒中デーのライトアップ実施施設と日程が決まりました!
- 臨江閣(前橋市):10月27日~10月31日
- 公益財団法人脳血管研究所 美原記念病院(伊勢崎市):10月23日~10月29日
- 公益財団法人脳血管研究所 研宗館(伊勢崎市)
11月8日には館林市にて同市が主催の脳卒中市民公開講座「脳卒中に負けないために」が開催されます(新着情報をご覧ください)。是非、お近くの方はぜひご参加いただければと思います。
本企画と合わせて、副センター長大宅宗一先生に、「世界脳卒中デーに寄せて ―ふだんの生活から脳卒中を防ぐ―」というタイトルでコラムを書いていただきました。
脳卒中はじめ血管の病気について考えていただく機会となれば幸いです。

副センター長
世界脳卒中デーに寄せて ―ふだんの生活から脳卒中を防ぐ―
10月29日は「世界脳卒中デー」です。脳卒中は脳の血管が詰まったり出血したりする病気で、今も日本人の死亡原因の第4位です。そして介護が必要になる病気として最も多いのです。「脳卒中は突然起こる病気」と思われがちですが、近年「その多くは予防できる」という考え方が世界中で広まっています。
最大の危険因子は高血圧です。のうしんでも「元気県ぐんま 家庭血圧チャレンジ」キャンペーンなど、高血圧の克服に熱心に取り組んでいます。普段の生活で、食塩を控える、野菜や果物を多くとる、適度な運動を続ける。このような基本的な生活習慣を改善することこそ、最も確かな予防策です。また近年は、心房細動による脳梗塞も注目されています。どうしてかというと、大きな脳梗塞になりその半数が寝たきりか死につながるためであり、別名「ノックアウト型脳梗塞」と言われています。自覚症状がなくても、心臓の中にできた血栓が脳の血管を詰まらせてしまうことがあります。今はこのタイプの脳梗塞が適切な薬で予防できる時代になりましたし、カテーテルで根治治療もできるようになりました。心房細動がないか、自分で検脈をすることも早期発見に重要です。
もう一つ大切なのは「脳卒中の前ぶれ」を見逃さないことです。一過性脳虚血発作と呼ばれるもので、数分で症状が消えてしまったりするのですが、その後数日以内に本格的な脳梗塞を起こす可能性が極めて高いです。いわゆるFASTといわれるものが重要です。
つまり
・ 顔がゆがんでないか(Face)
・ 両腕を「前ならえ」の状態で保てるか(Arm)
・ お話ができるか(Speech)」
このような症状が一瞬でも出たら、すぐに元に戻っても迷わず医療機関を受診してください(Time)。
治療は時間との勝負です。迅速に脳血管を評価して早期治療で後遺症を大幅に減らすことができるようになっています。
さらに、脳を健康に保ち、認知症を防ぎたいと願う人は多いと思います。脳卒中と認知症は、実は共通する危険因子が多くあります。高血圧、糖尿病、運動不足、社会的孤立などの生活習慣は、どちらの病気のリスクにもなります。脳卒中をきっかけに抑うつや活動の低下が起こると、認知症のリスクはさらに高まります。だからこそ、「脳と心を守る生活習慣」は、人生の質を支える大切な土台なのです。
世界脳卒中デーを機に、ご自身やご家族でお互いの生活を振り返り、今日からできる小さな一歩を始めてみませんか。脳卒中は防げる病気ではありますが、逆に油断すれば毎日の積み重ねで少しずつ発症へ近づいてしまうともいえるのです。未来の自分や大切な人の笑顔を守るためにも、今この瞬間から備えることが何より大切です。