「終末期医療を考える」

コラム

 2月末に終末期医療について大きな話題が二つありました。

 ひとつは、日本臨床救急医学会の調査において、全国各地の消防本部で蘇生中止の方針の文書化が増加しているということ、そしてもうひとつは、学会で作成されている救急・集中治療における生命維持治療の終了/差し控えに関する一つの方向性が明らかとなったことです。

 前者について、日本臨床救急医学会が全国720消防本部に対し、蘇生措置を望まない意思をあらかじめ示していた場合、救急隊が救命措置を中止できるかどうかを質問したところ、570本部から回答があり、42%が「蘇生措置の中止を認める方針を策定済み」、18%が「蘇生措置を行う」、40%が「取り決めなし」とのことでした。このことを、2025年3月17日に富岡甘楽広域消防本部の佐藤勝彦さんからご講演いただいた内容と比較すると、平成30年には回答のあった救急隊332本部(728本部中)のうち、「一定の条件下で心肺蘇生を実施しない、または中止できるか」という質問に対し、30%が「中止できる」、61%が「できない」、9%が「その他」でした。すなわち、方針の文書化が進み、救命措置を中止できる体制が大幅に増加したことになります。

 後者については、センターメンバーの多くが属する日本循環器学会を含む4学会により策定されている新たなガイドラインについて明らかとなりました(「救急・集中治療における生命維持治療の終了/差し控えに関する4学会合同ガイドライン」パブリックコメント募集のお知らせ | 一般社団法人 日本循環器学会)。こちらは今後パブリックコメントが募集され、その後正式に公表・発刊されますが、今後の方向性を考える上でかなり踏み込んだ内容となっていることが注目されます。患者さん本人の意思について、病状などの変化も加味して複数回確認し支援することの重要性や、ご家族も含めて十分に話し合いを行うことが強調されています。これは、現在の医療において、患者さん・ご家族と医療者間のコミュニケーション不足に起因する場面が少なくないためと考えられます。治療終了時の手順や、苦痛の種類ごとの対応なども具体的に示されています。一方で、終末期医療の議論が進む中で、延命治療を希望する患者や家族の意思が、かえって表明しにくくなるのではないかという懸念もあるかもしれません。今後は、治療の差し控えや終了の議論と同時に、患者ごとの価値観に基づいた多様な意思決定が尊重される体制づくりも重要と考えられます。現在までのガイドライン草案をご覧になってご意見がある方は、ぜひお寄せいただければと思います。

 この数年で、緩和医療・ACPについても考え方は大きく変化しています。本院の緩和ケアセンターメンバーや、群馬県立心臓血管センターに転勤された小板橋紀通先生、利根中央病院近藤誠先生はじめとした県内の先生方にご助言いただきながら、当センターの活動においても、この問題について今後もしっかり取り組んでいきたいと思っております。